寝台特急 乗車記 その2
寝台特急(ブルートレイン)北斗星 ロイヤル(A寝台個室)乗車記 (2007.4.8 2007.3.20乗車)
北海道での仕事が一段落した。最後は少し贅沢をして帰ろうと、飛行機を止め一度は乗ってみたかった寝台特急"北斗星"個室寝台"ロイヤル"を予約した。この個室、一列車に四部屋しかなくシーズン中は簡単には取れないプラチナチケットになるらしい。取れなかったら苫小牧、仙台間のフェリー特別室(こちらも魅力的)にしようと値段も考えず軽い気持ちで五日前に申し込んでみたところ、あっさり取れてしまった。"あけぼの"の個室シングルデラックスよりも約4,000円高いが、部屋は広くトイレ付シャワールームまであり、一人用個室としてはJR最高級、乗り物好きとして一度は乗ってみたかった。
17時過ぎに札幌駅に入線、ディーゼル機関車DD51重連の勇姿を見ようとホームの端まで行く。35年程昔、消え行くSL見たさに地方に行くと、このDD51に置き換えられていることが多くがっかりさせられたものだが、今日ではディーゼル機関車、しかも重連は貴重で、40年も昔の機関車がピカピカに磨かれ花形列車の先頭に立つ姿は、電車にはない重厚な迫力がある。
ちょっと得意気に9号車1号室に乗り込む。誕生以来20年近く、室内はどこもかしこも年期を感じさせるが、古い由緒あるホテルのような雰囲気がしないでもない。実に窓が大きい。
ほどなく車掌さんが検札に来て、慎重に切符を調べ(そりゃそうだ、誤乗なんかしたら予備の部屋なんか無いから泣くことになる)皮のタグが付いたルームキーを置いて行く。食堂車の乗務員がウエルカムドリンクを持って来た。ワイン、ウイスキーのミニチュアボトル+大量の氷、ミネラルウォーター、缶入りの緑茶が揃っていて、これで一晩の水分は十分だ。
ソファー兼ベットに座り椅子に足を投げ出し、黄昏て来た北の大地を眺めながら、ワインを飲む。夕方からワインを飲むなんてことは、普段はあり得ない。南千歳付近からは新千歳空港が見える。空港からも列車が見える。飛行機に乗ることよりも、豪華列車に乗っている人が羨ましくて仕方なかった。時代は変った。
苫小牧あたりから宵闇が迫り、王子製紙の大煙突をやっとの事でカメラに収める。室蘭までは何度も来たが、それから先は昔青函連絡船で北海道に渡って以来だろうか。室蘭の白鳥大橋が白く奇麗にライトアップされているのを初めて知った。室蘭で幾夜か過ごしても、この景観は見たことが無い。
内浦湾に沿い、天気が良ければ車窓から目が離せない路線。以前通った時は陽光に輝いていたのに、青函連絡船から乗り継ぐと我慢できない眠気に襲われる。夜も湾対岸の明かりが途切れることはなく、部屋の明かりを消すと線路に沿う渚が見える。ベットに横になり、天空を見上げれば何十年も見たことが無い満天の降るような星。いつもの何倍もの星が見え、見慣れたオリオンでさえ何の星座かしばし考えてしまう。
函館で機関車付け替えのため7分停車。作業を見に行くと10人余り他の乗客も見に来ている。未だに珍しがられるなんて観光列車みたいだ。
函館の手前から食堂車は予約不要のパブタイムとなる。ロイヤル乗客はルームサービスも頼めるのだが、グランシャリオと名付けられた食堂車に見学方々食べに行ってみる。新幹線が無かったころ東北本線の特急で利用して以来、揺られながら食事するのも悪くない。本当に時間がゆっくり流れる。
急に揺れが少なくなり、在来線特有のガタコンガタコンというレールの継ぎ目の音も消え、目を瞑っていても青函トンネルに入ったと気付く。普通の列車では車内が明るく外の様子は良く解らないが、部屋の照明を消して眺めているとトンネル内がうっすらと見える。巨大で立派な構造物の片鱗が見え驚く。新幹線規格だから在来線のトンネルよりも二回り大きい。感心はしても、私はトンネルは嫌いだ。おまけに海底トンネルだ。地震で断層が動き、トンネルが水没してしまったらどうしよう、海底下100mだから、一気に水没することは無いのだろうが、もし何かの事故で途中で止まったら・・・・ そんな事を考えているうちに眠ってしまった。
慣れとは不思議なもので、列車が止まると目が覚める。盛岡で目が覚めた。また眠り5時少し前、仙台で目が覚めた。ここで降りれば30分で家に着くけれど、こんな高い列車、途中で降りるなんてもったいない。東京に用事もあることだし。
寝台列車の最大の欠点は、6時半に車内放送で起こされること。到着は10時近くなのだから、8時くらいまで寝せておいてくれれば良いのに。郡山到着前に放送が始まり仕方が無いので早暁の山河や沿線の風景を眺めていた。街路樹も庭先の花も、踏み切りにたたずむ人の表情まで見える在来線は良い。飛行機から俯瞰する景色も好きだが、数m先に土地土地の生活がある臨場感も楽しい。
少しは仕事をしようとパソコンを取り出し机上に置くが、机の揺れと体の揺れが一致せず、非常に作業し辛い。手に持った本なら同じに動くから、まだ良い。考えてみると乗り物の中でパソコンをいじるのは初めてだ。経験すると考えてもいなかった事に気付く。
東北新幹線は大宮以南東北本線から大きく西に逸れるため、昔はいつも通ったこの路線も懐かしく、バチバチ写真を撮った。個室でなければ恥ずかしくて出来ぬ。荒川を渡り新幹線からは見えない赤羽駅を通過し、機関車、客車群が居並ぶ尾久を過ぎ、上野駅地上ホームに定刻到着、降りるのが残念に思えるくらい17時間、1200kmの旅は快適だった。料金は飛行機よりも高く、時間は十倍程度。本当に贅沢な旅だが、この旅情は飛行機や新幹線では味わえない。
一生の思い出のつもりが半年間に2度も乗ってしまったA寝台個室。これはもうトワイライトエクスプレス、スイートに乗るしかない。
参考 札幌-上野間 運賃 16,080円 特急料金 2,890円 寝台(ロイヤル)料金 17,180円 合計36,150円
上記B寝台利用の場合 25,270円
上記新幹線、昼間特急利用の場合 22,270円 所要約10時間
羽田-新千歳空港 片道正規航空券 30,800円
ブルートレイン(寝台特急)あけぼの A寝台個室乗車記
寝台特急 トワイライトエクスプレス A寝台個室ロイヤル乗車記
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